家族が亡くなったとき、通夜や告別式をせずに火葬だけで見送る「直葬(ちょくそう)」という選択肢が注目されています。費用を抑えられる・準備の負担が少ないなどの理由から、近年は直葬を選ぶ方が増えてきました。
一方で、「本当に直葬でいいのか」「あとで後悔しないか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、直葬のメリット・デメリットを詳しく解説し、費用相場や注意点、後悔しないために押さえておきたいポイントを紹介します。
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直葬(火葬式)とは?基本を押さえよう
直葬とは、通夜や葬儀・告別式を行わず、火葬のみで故人を送る葬儀形式のことです。「火葬式」とも呼ばれます。
一般的な葬儀では、亡くなった翌日に通夜、その翌日に告別式と火葬を行うのが通常の流れです。しかし直葬では、安置の後そのまま火葬場へ移動し、簡単なお別れの時間を経て火葬を行います。
直葬の基本的な流れ
直葬は次のような流れで進みます。
- ご逝去・病院からの搬送(寝台車で自宅や安置施設へ)
- 安置場所での安置(自宅または安置施設、ドライアイスで保全)
- 死亡届の提出・火葬許可証の取得(市区町村の役所で手続き)
- 納棺・お花入れ(故人の身支度を整えてお棺に納める)
- 火葬場へ搬送(霊柩車で移動)
- お別れの時間(炉前で10〜15分程度)
- 火葬・収骨(約1〜2時間)
法律上、亡くなってから24時間は火葬ができないため、最低でも1日は安置する必要があります。そのため「即日火葬」ではなく、翌日以降に火葬を行うのが一般的です。また、火葬場の予約状況によっては、2〜3日待つこともある点は覚えておきましょう。
直葬のメリット5つ
1. 費用を大幅に抑えられる
直葬の最大のメリットは、葬儀費用を大きく抑えられる点です。一般的な葬儀の全国平均が約116万円であるのに対し、直葬の費用相場は約20万〜40万円程度です(鎌倉新書「お葬式に関する全国調査」参考)。
通夜・告別式にかかる式場費用、祭壇費用、料理・返礼品の費用などが不要になるため、総額で50万円以上の差が出ることも珍しくありません。葬儀仲介サービスの直葬プランを利用すれば、10万円台から対応可能なケースもあります。
2. 準備・当日の負担が軽い
一般葬では、参列者への連絡、料理や返礼品の手配、式場の打ち合わせなど多くの準備が必要です。直葬ならこうした準備がほぼ不要なため、ご遺族の身体的・精神的な負担が軽減されます。
高齢のご家族が喪主を務める場合や、急な不幸で十分な準備時間が取れない場合に、直葬は現実的な選択肢になります。参列者への気遣いに追われることなく、故人との最後の時間に集中できるのも大きなメリットです。
3. 時間を短縮できる
一般葬が2日間かかるのに対し、直葬は火葬当日の数時間で完了します。遠方から駆けつける親族の負担も少なく、仕事を長期間休めない方にとってもメリットが大きいです。特に、故人が高齢で参列者が限られるケースでは、短時間で終わる直葬は合理的な選択と言えます。
4. 人間関係のストレスが少ない
一般葬では多くの参列者への対応や挨拶が必要ですが、直葬は基本的にごく少人数で行うため、人付き合いに関するストレスが少ないのも特徴です。
「故人との静かな時間を大切にしたい」「あまり大ごとにしたくない」という方に向いています。喪主としての挨拶や、参列者一人ひとりへの対応に気を回す必要がなく、落ち着いた気持ちでお別れができます。
5. 宗教にこだわらないお別れができる
直葬は宗教的な儀式を伴わないケースが多いため、特定の宗教・宗派に属していない方や、形式にとらわれたくない方に適しています。希望すれば読経のみ依頼することも可能です。無宗教でも成り立つため、故人やご遺族の考え方に合わせた自由なお別れのスタイルが実現できます。

直葬のデメリット5つ
1. 周囲の理解が得られないことがある
親族や故人の知人から「葬式もしないのか」と批判される可能性があります。特に年配の方にとっては、通夜・告別式を行うのが当然という考えが根強いです。
事前に家族や親族と話し合い、直葬を選ぶ理由を丁寧に説明しておくことが大切です。「故人の遺志である」「経済的な事情がある」など具体的な理由を伝えると、理解を得やすくなります。
2. お別れの時間が短い
直葬では火葬前に10〜15分程度のお別れ時間しか取れないことが多く、「もっとゆっくりお別れしたかった」と後悔する方もいます。安置中に自宅で時間をかけてお別れするなど、工夫が必要です。安置施設によっては面会可能な時間が限られることもあるため、事前に確認しておきましょう。
3. 菩提寺との関係に注意
菩提寺がある場合、直葬を選ぶと納骨を断られる可能性があります。お寺の考え方によりますが、「宗教儀式を行わなかった」ことを問題視されるケースがあるため、事前に菩提寺へ相談しておくことをおすすめします。場合によっては、戒名を授けてもらえないこともあり得るので注意が必要です。
4. 後日の弔問対応が増える
通夜・告別式を行わないため、故人の知人や会社関係者が後日個別に弔問に訪れることがあります。かえって対応の手間が増えてしまうこともあるため、事前に訃報の連絡方法や弔問の受け方を決めておきましょう。「弔問はお断りさせていただきます」と案内する方法もあります。
5. 葬祭費の補助金が受け取れない場合がある
自治体によっては、国民健康保険の「葬祭費」の支給要件に「葬儀を行ったこと」が含まれている場合があります。直葬が「葬儀」として認められるかは自治体ごとに異なるため、事前に確認が必要です。多くの自治体では直葬でも支給対象になりますが、申請の際に火葬の領収書や会葬礼状の提出を求められることがあります。

直葬の費用相場と内訳
直葬にかかる費用は、全国平均で約20万〜40万円が目安です。内訳を見ていきましょう。
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 搬送費(寝台車) | 約2万〜5万円 |
| 安置費用(ドライアイス含む) | 約1万〜3万円/日 |
| 棺 | 約3万〜8万円 |
| 骨壺 | 約5千〜3万円 |
| 火葬料金(公営) | 無料〜数万円 |
| 火葬料金(民営) | 約7万〜10万円 |
| 葬儀社手数料 | 約5万〜15万円 |
火葬料金は公営と民営で大きく異なります。公営火葬場は市区町村の住民であれば無料〜数千円で利用できるところもある一方、民営では7万〜10万円程度かかるのが一般的です。東京都内の場合、公営の瑞江葬儀所では住民料金が数千円程度ですが、民営の火葬場では約6万〜10万円かかります。
葬儀社の「直葬プラン」には、火葬料金が含まれていないケースが多いです。総額を確認する際は、火葬料金が別途かかるかどうかを忘れずにチェックしましょう。また、安置日数が延びた場合の追加料金もあらかじめ確認しておくと安心です。
直葬と他の葬儀形式の違いを比較
直葬がどのような位置づけにあるのか、他の葬儀形式と費用・時間・規模を比較してみましょう。
| 葬儀形式 | 費用相場 | 所要日数 | 参列者の目安 |
|---|---|---|---|
| 直葬(火葬式) | 20万〜40万円 | 当日のみ | 家族のみ(数名) |
| 一日葬 | 30万〜60万円 | 1日 | 10〜30名程度 |
| 家族葬 | 50万〜100万円 | 2日 | 10〜30名程度 |
| 一般葬 | 100万〜200万円 | 2日 | 30名以上 |
直葬は最もコンパクトで低価格ですが、通夜・告別式がない分、お別れの「儀式」としての側面は薄くなります。費用と形式のバランスを考えて、ご家庭に合った葬儀形式を選ぶことが大切です。「費用は抑えたいけれど、ある程度のお別れの場は欲しい」という場合は、一日葬を検討するのもよいでしょう。
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直葬で後悔しないための5つのポイント
1. 家族・親族との事前の話し合い
直葬を選ぶ場合は、ご家族や親族に事前に相談し、合意を得ておくことが大切です。特に故人の兄弟姉妹や親しい友人には、直葬にする理由をきちんと伝えておきましょう。生前のうちから「エンディングノート」に葬儀の希望を書いてもらう方法も有効です。
2. 菩提寺への確認
菩提寺がある場合は、直葬で問題ないか事前に相談してください。必要であれば、火葬前に読経だけお願いするなど柔軟に対応できる場合もあります。お寺によっては「炉前読経さえあれば大丈夫」というケースもあるため、遠慮なく聞いてみることをおすすめします。
3. お別れの時間を工夫する
火葬場でのお別れ時間は短いため、安置中に自宅でゆっくり過ごす時間を設けるなど、故人との時間をしっかり確保する工夫をしましょう。自宅安置であれば、好きな音楽を流したり、思い出の写真を飾ったりと、自由な形でお別れの空間を作れます。
4. 後日のお別れ会を検討する
直葬の後に、改めて「お別れ会」や「偲ぶ会」を開く方法もあります。参列できなかった方にも故人を偲んでいただける場を設けることで、後悔が減るケースは多いです。レストランやホテルで食事をしながら行う形式も増えており、堅苦しくないお別れの場を設けられます。
5. 複数の葬儀社を比較する
直葬プランの内容や料金は葬儀社によって異なります。見積もりを複数社から取り、含まれるサービスや追加料金の有無を比較することをおすすめします。特にチェックすべきポイントは、火葬料金が込みか別途か、安置の追加料金の単価、搬送の距離制限があるかどうかです。

直葬が向いている人・向いていない人
直葬が向いている人
- 葬儀費用をできるだけ抑えたい方
- 家族だけで静かに見送りたい方
- 高齢や体調の問題で長時間の葬儀が難しい方
- 故人が「葬儀は不要」と生前に希望していた場合
- 特定の宗教にこだわりがない方
- 参列者がごく少数に限られる場合
直葬が向いていない人
- 多くの参列者を招いてしっかりお別れしたい方
- 菩提寺との関係を大事にしたい方
- 宗教的な儀式を重視する方
- 親族間で直葬への理解が得られない方
- 会社関係など社会的な弔意を示す必要がある方
直葬を選ぶ人が増えている背景
近年、直葬を選択する方は増加傾向にあります。その背景には、以下の要因があります。
- 核家族化:家族の規模が小さくなり、大規模な葬儀の必要性が低下している
- 高齢化:故人が高齢の場合、参列者が少ないケースが増えている。故人の友人・知人もすでに亡くなっていたり、高齢で参列が難しかったりする
- 価値観の多様化:「形式よりも気持ち」を大切にする考え方が広がっている
- 経済的事情:年金生活や貯蓄が少ない世帯では、葬儀費用が家計の大きな負担になる
- コロナ禍以降の変化:感染症対策として小規模葬が広がり、その延長線上で直葬を選ぶ方も増えた
内閣府の「高齢社会白書」によれば、65歳以上の高齢者人口は総人口の約29%を超えており、葬儀の小規模化は今後も進むと考えられます。
よくある質問(Q&A)
Q. 直葬でもお坊さんに読経を頼めますか?
はい、可能です。火葬前に10分程度の読経をお願いする「炉前読経」というスタイルがあります。お布施の目安は3万〜10万円程度です。菩提寺がある場合は、まず菩提寺にご相談ください。菩提寺がない場合は、葬儀社が僧侶を手配してくれるサービスを利用する方法もあります。
Q. 直葬で香典は受け取ってもいいですか?
マナー上の問題はありません。ただし、直葬の場合は「香典辞退」とする方が多い傾向にあります。受け取る場合は、後日香典返しを用意するのが一般的です。訃報連絡の際に「香典は辞退させていただきます」と一言添えておくとスムーズです。
Q. 直葬の後にお墓に納骨できますか?
火葬許可証(埋葬許可証)があれば、直葬であっても納骨は可能です。ただし、菩提寺によっては宗教儀式なしの直葬に難色を示すこともあるため、事前確認が大切です。公営の霊園であれば、葬儀形式を問わず納骨できるケースがほとんどです。
Q. 生活保護を受けていても直葬はできますか?
はい、生活保護受給者の方が葬儀を行う場合、自治体から「葬祭扶助」として約20万円前後が支給されます。この制度は直葬(火葬式)にも適用されるため、費用の心配なくお見送りが可能です。申請は担当のケースワーカーを通じて行います。
Q. 直葬にかかる時間はどのくらいですか?
火葬場での滞在時間は約1〜2時間程度です。受付・お別れの時間が10〜15分、火葬が約1時間、収骨が15〜20分程度が目安になります。ただし、安置期間を含めると、ご逝去から収骨まで2〜3日かかるのが一般的です。
Q. 直葬の場合、死装束(しにしょうぞく)や副葬品はどうなりますか?
直葬でも、故人の好きだった洋服を着せたり、愛用品をお棺に入れたりすることは可能です。ただし、火葬場の規定により棺に入れられないもの(金属製品、ガラス、大きなぬいぐるみなど)がありますので、事前に葬儀社に確認してください。

まとめ
直葬は、費用を抑えながらシンプルに故人を見送りたい方に適した葬儀形式です。メリット・デメリットを整理すると以下のようになります。
メリット:費用が安い・準備が楽・時間が短い・人間関係のストレスが少ない・宗教にこだわらない
デメリット:周囲の理解が得にくい・お別れの時間が短い・菩提寺との関係に注意・後日弔問が増える・葬祭費の補助が出ない場合がある
後悔しないためには、家族・親族との事前の話し合いと、菩提寺への確認がとても重要です。また、葬儀社の見積もりは複数社を比較し、火葬料金の扱い(込みか別途か)を忘れずに確認してください。
直葬は決して「手抜きのお葬式」ではありません。故人の意志やご家族の状況に合わせた、立派なお別れの形です。しっかり情報を集めて、納得のいく選択をしてください。
参考:はじめてのお葬式ガイド「直葬・火葬式とは?」 | くらしの友「直葬とは?」 | 小さなお葬式「直葬の費用相場と安くする方法」
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