家族が亡くなった後に遺言書が見つかったら、まず何をすべきでしょうか。自筆証書遺言が自宅などから発見された場合、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所での「検認」という手続きが必要になります。
検認を行わずに遺言書を開封すると5万円以下の過料が科される可能性があり、相続手続きにも支障をきたします。この記事では、遺言書の検認手続きの流れ、必要書類、費用について詳しく解説していきます。

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遺言書の検認とは
検認とは、家庭裁判所が遺言書の形状や内容を確認し、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。検認は遺言の有効・無効を判断する手続きではなく、あくまで遺言書の現状を保全するためのものです。
検認の法的根拠
民法1004条により、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求しなければなりません。
検認が必要な遺言書と不要な遺言書
| 遺言書の種類 | 検認の要否 |
|---|---|
| 自筆証書遺言(自宅等で保管) | 必要 |
| 自筆証書遺言(法務局保管制度を利用) | 不要 |
| 公正証書遺言 | 不要 |
| 秘密証書遺言 | 必要 |
法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用して保管されている遺言書は、2020年7月から検認が不要となりました。また、公正証書遺言は原本が公証役場に保管されているため、偽造・変造の恐れがなく検認は不要です。

検認手続きの流れ(5ステップ)
検認手続きの全体の流れを5つのステップで解説します。
ステップ1:必要書類の収集
検認の申立てには、以下の書類が必要です。
- 検認申立書(家庭裁判所の窓口またはウェブサイトで入手可能)
- 遺言書の原本(封印されている場合は開封しない)
- 遺言者(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 収入印紙800円分(遺言書1通につき)
- 連絡用の郵便切手(裁判所ごとに異なるが、概ね1,000~2,000円程度)
戸籍謄本は1通450円(除籍謄本・改製原戸籍は750円)です。出生から死亡までの戸籍を取り寄せるには、本籍地が変わっている場合は複数の自治体に請求する必要があり、2~4週間程度かかることもあります。
取り寄せた戸籍謄本は、検認のあとも銀行や不動産の相続手続きで繰り返し使います。届いた順にファイルへまとめておくと、手続きのたびに探し回らずに済みます。
ステップ2:家庭裁判所への申立て
書類が揃ったら、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認の申立てを行います。申立ては窓口への直接提出のほか、郵送でも可能です。
ステップ3:検認期日の通知
申立てが受理されると、家庭裁判所から相続人全員に検認期日(遺言書を開封・確認する日)の通知が届きます。申立てから検認期日までは、通常1~2ヶ月程度かかります。
ステップ4:検認期日への出席
検認期日には、申立人は出席する必要があります。他の相続人は出席しなくても手続きは進行します。検認期日では、裁判官の立会いのもとで遺言書を開封し、内容を確認します。
ステップ5:検認済証明書の取得
検認が完了したら、「検認済証明書」の交付を申請します。この証明書がなければ、金融機関での相続手続きや不動産の名義変更ができません。交付手数料は、遺言書1通につき収入印紙150円です。

検認にかかる費用の内訳
検認手続き自体にかかる費用は、比較的少額です。
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 申立て手数料(収入印紙) | 800円 |
| 連絡用郵便切手 | 1,000~2,000円程度 |
| 検認済証明書(収入印紙) | 150円 |
| 戸籍謄本等の取得費用 | 数千円~1万円程度 |
| 合計目安 | 3,000~15,000円程度 |
裁判所に支払う費用自体は約1,000円と非常に安価です。費用の大部分は戸籍謄本の取得費用で、相続人の人数や本籍地の移動回数によって変動します。
専門家に依頼した場合の費用
弁護士や司法書士に検認手続きの代行を依頼する場合は、別途報酬が発生します。一般的な相場は3万~10万円程度です。戸籍の収集から申立書の作成、裁判所への同行までをワンストップで対応してもらえるため、手間を省きたい方には有効な選択肢です。
自分で手続きを進める場合は、検認後の相続手続きまでの流れを解説した本を1冊手元に置いておくと、次に何をすればいいか確認しやすくなります。
検認をしないとどうなるのか
遺言書の検認を行わずに開封した場合や、検認そのものを怠った場合のリスクについて説明します。
5万円以下の過料が科される可能性
検認を経ずに遺言書を開封した場合、5万円以下の過料が科される可能性があります(民法1005条)。ただし、実際に過料が科されるケースは多くないとされています。
相続手続きが進まない
検認済証明書がないと、金融機関での名義変更や不動産の相続登記ができません。結果として、遺産の分配が大幅に遅れることになります。
遺言書の有効性には影響しない
よく誤解されますが、検認をしなかったからといって遺言書が無効になるわけではありません。検認はあくまで保全のための手続きであり、遺言の有効性とは別問題です。ただし、検認を経ていない遺言書は、相続手続きの実務上使えないため、結局は検認を行う必要があります。

検認の注意点とよくあるトラブル
封印のある遺言書は開封厳禁
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人(またはその代理人)の立会いのもとでなければ開封できません。好奇心から開けてしまう方がいますが、過料の対象になるだけでなく、他の相続人から「改ざんしたのではないか」と疑われるリスクもあります。
検認は遺言の有効性を保証しない
検認は遺言書の偽造・変造を防ぐための手続きであり、遺言の内容が法的に有効かどうかを判断するものではありません。検認済みの遺言書であっても、方式の不備や遺言能力の問題で無効とされる場合があります。
相続人全員に通知される
検認の申立てをすると、相続人全員に通知が届きます。遺言の存在を特定の相続人に伏せておくことはできないため、その点は理解しておきましょう。
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検認を避けたい場合の対策
検認の手間を省きたい場合は、以下の方法を検討してください。
- 法務局の遺言書保管制度を利用する:自筆証書遺言を法務局に預けておけば、検認は不要。保管手数料は3,900円
- 公正証書遺言を作成する:公証役場で作成すれば検認不要。手数料は遺産額により異なる
どちらの方法も検認が不要になるだけでなく、遺言書の紛失・破棄のリスクも大幅に軽減できます。将来の家族の負担を減らしたいなら、これらの制度の利用を強くおすすめします。
自筆証書遺言を自分で書く場合は、用紙や封筒、書き方の手引きがセットになった遺言書キットを使う方もいます。ただし、キットを使っても自筆証書遺言には形式の要件があるため、不安なときは専門家や法務局の保管制度もあわせて確認してください。
よくある質問(Q&A)
Q. 検認の申立ては誰ができますか?
遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人が申立てを行います。それ以外の親族や第三者は申立てできません。
Q. 検認期日に出席しなかった相続人の権利は失われますか?
いいえ、失われません。検認期日に出席しなくても、相続権や遺言の効力に影響はありません。ただし、出席すれば遺言書の内容を直接確認できます。
Q. 検認にはどのくらい時間がかかりますか?
申立てから検認完了まで、一般的に1~2ヶ月程度です。戸籍謄本の収集に時間がかかる場合は、さらに数週間かかることもあります。

検認手続きに必要な戸籍の集め方
検認の申立てで最も手間がかかるのが、被相続人の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本の収集です。具体的な手順を解説します。
最後の本籍地の役所から始める
まず、被相続人の死亡時の本籍地の市区町村役場で、最新の戸籍謄本を取得します。この戸籍に「転籍」や「婚姻」などで以前の本籍地が記載されていれば、その自治体にも請求します。
改製原戸籍も忘れずに
戸籍法の改正(昭和32年、平成6年)のたびに戸籍が作り替えられています。改製原戸籍(かいせいげんこせき)も請求しないと、出生まで遡れない場合があります。改製原戸籍は1通750円です。
郵送でも請求可能
遠方の自治体の戸籍は郵送で請求できます。定額小為替(手数料分)と返信用封筒を同封して、自治体の戸籍担当窓口に送付します。自治体によっては広域交付制度に対応しており、最寄りの市区町村の窓口で他の自治体の戸籍も取得できる場合があります。
相続人確定までの所要期間
被相続人の生涯で本籍地が何度も変わっている場合、すべての戸籍を揃えるまでに2週間~1ヶ月以上かかることもあります。検認の申立てを早く済ませたい場合は、被相続人の死亡がわかった時点で速やかに戸籍収集に取りかかることをおすすめします。

法務局の遺言書保管制度を活用しよう
検認の手間を避ける方法として、自筆証書遺言を法務局に預ける「遺言書保管制度」が注目されています。
制度の概要
2020年7月に開始されたこの制度では、自筆証書遺言を法務局に預けることができます。保管手数料は3,900円で、預けた遺言書については相続開始後の検認が不要になります。
メリット
- 検認手続きが不要になる
- 遺言書の紛失・破棄・隠匿を防止できる
- 法務局職員による外形的なチェックを受けられる(方式の不備を指摘してもらえる場合がある)
- 相続開始後、相続人に通知が届く仕組みがある
ただし、法務局での保管は外形的なチェックのみであり、遺言の内容の有効性を保証するものではありません。内容について法的な確認を受けたい場合は、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
まとめ
遺言書の検認は、自筆証書遺言(自宅保管)や秘密証書遺言が見つかった場合に必要となる手続きです。
- 検認は遺言書の偽造・変造を防ぐための保全手続き
- 費用は裁判所への支払いで約1,000円、戸籍取得費を含めても数千~1.5万円程度
- 申立てから完了まで1~2ヶ月程度かかる
- 検認を避けたい場合は、法務局保管制度か公正証書遺言を選択する
遺言書を見つけたら、焦らず、開封せずに、家庭裁判所への検認申立ての準備を進めましょう。手続きに不安がある方は、弁護士や司法書士に相談すると安心です。
参考リンク:税理士法人チェスター「遺言書の検認とは」|裁判所「申立て費用一覧」|LegalPro「検認手続きの5ステップ」
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