「生前贈与って年間110万円まで非課税なんでしょ?」という知識をお持ちの方は多いと思います。しかし、実は110万円以外にも生前贈与で使える非課税枠は複数存在します。これらを上手に組み合わせることで、贈与税をかけずに大きな金額を移転することも可能です。
この記事では、生前贈与で利用できる非課税制度を6つ紹介し、それぞれの限度額・適用要件・注意点を詳しく解説します。2024年の税制改正による変更点も反映していますので、最新の情報を確認してください。

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生前贈与の非課税枠の全体像
まずは生前贈与で利用できる非課税制度の全体像を一覧で確認しましょう。
| 非課税制度 | 非課税限度額 | 適用期限 |
|---|---|---|
| 暦年課税の基礎控除 | 年間110万円 | 期限なし(恒久制度) |
| 相続時精算課税の特別控除 | 累計2,500万円(+年110万円の基礎控除) | 期限なし(恒久制度) |
| 住宅取得等資金の贈与 | 省エネ等住宅1,000万円 / 一般住宅500万円 | 2026年12月31日まで |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 1,000万円(結婚費用は300万円まで) | 2027年3月31日まで |
| 夫婦間の居住用不動産贈与 | 2,000万円 | 期限なし(恒久制度) |
| 生活費・教育費の都度贈与 | 上限なし(通常必要な範囲) | 期限なし(恒久制度) |
それでは、各制度を詳しく見ていきましょう。
1. 暦年課税の基礎控除(年間110万円)
最もポピュラーな非課税枠です。受贈者(もらう人)1人あたり年間110万円までの贈与は、贈与税がかかりません。贈与者の人数に制限はないので、父からも母からも祖父からも、それぞれ別に贈与を受けることができます。ただし、受贈者が1年間に受け取った贈与の合計が110万円を超えるかどうかで判定されます。
2024年改正による「7年加算ルール」
暦年課税で贈与を行った後、贈与者が亡くなった場合、相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算されるようになりました(従来は3年以内)。2024年1月1日以降の贈与から適用が始まり、2031年以降の相続で完全に7年加算となります。
ただし、延長された4年間分(4〜7年前の贈与)については、総額100万円まで加算しない緩和措置が設けられています。
制度の組み合わせ方を落ち着いて整理したい場合は、改正後の内容に対応した生前贈与の解説書を手元に置いておくと確認しやすくなります。
7年加算の対象は「相続人」と「受遺者(遺言で財産を受け取る人)」です。相続人ではない孫や、遺言による財産の取得がない人への贈与は加算の対象外となります。

2. 相続時精算課税の特別控除(累計2,500万円+年110万円)
60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について選択できる制度です。累計2,500万円までは贈与税がかからず、超えた分には一律20%の税率で課税されます。
2024年改正で年110万円の基礎控除が新設
2024年1月以降、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられました。この110万円以内の贈与は申告不要で、相続時にも加算されません。これは暦年課税の基礎控除とは別枠で適用されます。
つまり、相続時精算課税を選択した場合:
- 年110万円以内 → 贈与税ゼロ・申告不要・相続加算なし
- 年110万円超〜累計2,500万円以内 → 贈与税ゼロだが申告必要・相続時に加算
- 累計2,500万円超 → 超過分に20%の贈与税・相続時に加算
相続時精算課税の年110万円基礎控除は「7年加算」の対象外です。毎年110万円以内の贈与を続ければ、暦年課税の7年加算を回避しながら非課税で財産を移転できます。
3. 住宅取得等資金の贈与の非課税特例
直系尊属(父母・祖父母)から18歳以上の子・孫への住宅取得資金の贈与について、一定額まで非課税になる特例です。
| 住宅の種類 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 省エネ等住宅(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上) | 1,000万円 |
| 一般住宅(上記以外) | 500万円 |
適用期限は2026年12月31日までの贈与が対象です。暦年課税の基礎控除110万円や相続時精算課税(2,500万円)との併用も可能で、最大で省エネ住宅なら3,610万円(1,000万円+110万円+2,500万円)まで非課税にできます。

4. 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例
直系尊属(父母・祖父母)から18歳〜49歳の子・孫への結婚・子育て資金の一括贈与について、1,000万円まで(うち結婚費用は300万円まで)が非課税になる制度です。
金融機関に専用口座を開設し、結婚式費用・出産費用・子どもの医療費・保育料などに使う場合に非課税となります。適用期限は2027年3月31日までです。
注意点
- 50歳時点で口座に残額がある場合、残額に対して贈与税が課される
- 贈与者が死亡した場合、残額は相続税の課税対象になる(相続税の2割加算の対象外)
- 使途ごとに領収書の提出が必要
領収書は後からまとめて探すと手間がかかるので、専用のファイルを1冊用意して受け取るたびに入れておくと提出がスムーズです。
5. 夫婦間の居住用不動産贈与(おしどり贈与)
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得資金を贈与する場合、最大2,000万円まで贈与税がかかりません。暦年課税の基礎控除110万円と合わせると、合計2,110万円まで非課税です。
適用要件
- 婚姻期間が20年以上であること
- 居住用不動産そのもの、または居住用不動産の取得資金の贈与であること
- 贈与を受けた翌年3月15日までにその住居に住み、引き続き住む見込みがあること
- 過去に同じ配偶者からこの特例を受けていないこと
6. 生活費・教育費の都度贈与
扶養義務者(親・祖父母など)から、生活費や教育費として通常必要と認められる範囲で都度渡すお金は、金額にかかわらず贈与税がかかりません。これは特例ではなく、贈与税の非課税財産として法律に定められています。
たとえば以下のようなものが該当します。
- 子どもの大学の授業料を毎月振り込む
- 孫の学習塾の月謝を毎月支払う
- 同居の親の介護費用を負担する
- 生活が苦しい子どもに毎月の生活費を援助する
ポイントは「通常必要な範囲」で「都度渡す」ことです。一括で大金を渡して貯蓄に回った場合は贈与税の対象になるリスクがあります。

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非課税枠の併用パターン
複数の非課税枠は要件が合えば併用できます。代表的な組み合わせを紹介します。
パターン1:住宅購入時(暦年課税+住宅取得資金特例)
暦年課税の基礎控除110万円+住宅取得資金の非課税1,000万円(省エネ住宅の場合)=合計1,110万円まで非課税
パターン2:住宅購入時(相続時精算課税+住宅取得資金特例)
相続時精算課税の特別控除2,500万円+年110万円基礎控除+住宅取得資金の非課税1,000万円=合計3,610万円まで非課税
パターン3:毎年の贈与+生活費援助
暦年課税の基礎控除110万円の贈与+都度の生活費・教育費援助(非課税)を並行して行うことが可能
よくある質問(Q&A)
Q. 暦年贈与の110万円は廃止されたの?
A. 廃止されていません。2024年の改正で「相続開始前の加算期間が3年から7年に延長」されましたが、年間110万円の基礎控除自体は維持されています。
Q. 教育資金の一括贈与はまだ使える?
A. 教育資金の一括贈与の非課税特例(最大1,500万円)は、2026年3月31日で新規の適用が終了しました。既に口座を開設済みの方は経過措置で引き続き利用できます。
Q. 孫への贈与は7年加算の対象になる?
A. 7年加算の対象は「相続人」と「受遺者」です。孫が相続人でなく、遺言による財産の取得もない場合は加算の対象外です。ただし、孫を養子にしている場合は相続人として加算対象になります。
Q. 非課税枠を超えて贈与した場合の税率は?
A. 暦年課税の場合、110万円を超えた部分に対して10〜55%の累進税率で贈与税がかかります。たとえば110万円超〜310万円以下の部分は10%、1,000万円超〜1,500万円以下の部分は45%です(特例税率の場合)。
各制度の非課税限度額や適用期限は税制改正で変更される可能性があります。実際に贈与を行う際は、税理士や税務署に最新の情報を確認してから手続きを進めましょう。
2024年改正のポイントまとめ
2024年(令和6年)1月に施行された改正により、生前贈与の非課税枠に大きな変更がありました。改正のポイントを改めて整理します。
変更点1:暦年課税の加算期間が3年から7年に延長
暦年課税で行った贈与のうち、贈与者が亡くなった場合に相続財産に加算される期間が、従来の3年から最大7年に延長されました。この変更は2024年1月1日以降の贈与から段階的に適用され、2031年以降の相続で完全に7年加算となります。
変更点2:相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設
相続時精算課税制度にも、年間110万円の基礎控除が新たに設けられました。この110万円以内の贈与は申告不要で、相続時の加算対象にもなりません。これにより、相続時精算課税の使い勝手が大きく向上しました。
変更点3:教育資金一括贈与の終了
教育資金の一括贈与の非課税特例(最大1,500万円)は、2026年3月31日をもって新規の適用が終了しました。既に口座を開設済みの方は経過措置が適用されます。

生前贈与の非課税枠を活用した節税シミュレーション
暦年課税の110万円を活用して長期間にわたって贈与した場合の効果を、具体的にシミュレーションしてみましょう。
ケース:親から子2人に毎年110万円ずつ贈与した場合
年間の贈与額:110万円×2人=220万円
10年間の贈与総額:220万円×10年=2,200万円
20年間の贈与総額:220万円×20年=4,400万円
贈与税はゼロで、20年間で4,400万円の財産を移転できる計算です。仮に相続税の税率が30%だとすると、4,400万円×30%=1,320万円の節税効果が見込めます。
ただし、暦年課税の場合は贈与者が亡くなった場合の7年加算ルールがあるため、直近7年分の贈与は相続財産に戻されます。節税効果を最大化するには、できるだけ早くから贈与を始めることが重要です。
自分の家の場合で試算してみるときは、桁数の多い計算にも対応できる12桁の電卓があると数字を確かめやすくなります。
非課税制度を利用する際の申告の注意点
生前贈与の非課税制度を利用する場合でも、申告が必要なケースと不要なケースがあります。間違えると余計な税金を支払うことになりかねないため、確認しておきましょう。
申告が不要なケース
- 暦年課税で年間110万円以内の贈与
- 相続時精算課税で年間110万円以内の贈与(2024年〜)
- 生活費や教育費の都度贈与(通常必要な範囲)
申告が必要なケース
- 暦年課税で年間110万円を超える贈与を受けた場合
- 相続時精算課税で年間110万円を超える贈与を受けた場合
- 住宅取得等資金の非課税特例を利用する場合(結果的に税額ゼロでも申告必須)
- 結婚・子育て資金の一括贈与を利用する場合
- おしどり贈与(夫婦間の居住用不動産贈与)を利用する場合
住宅取得等資金やおしどり贈与は、特例を使って税額がゼロになる場合でも贈与税の申告が必要です。申告を忘れると特例が適用されず、本来かからないはずの贈与税が課されることになります。申告期限は贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日です。
まとめ
生前贈与の非課税枠は、暦年課税の年110万円だけでなく、相続時精算課税の2,500万円(+年110万円)、住宅取得資金の最大1,000万円、おしどり贈与の2,000万円など複数の制度を組み合わせることで大きな金額を非課税で移転できます。
ただし、2024年の改正による7年加算ルールの導入や、教育資金一括贈与の終了など、制度は常に変化しています。非課税枠を賢く活用するには、最新の制度をしっかり把握し、専門家のアドバイスを受けながら計画的に進めることが大切です。
参考:国税庁 贈与税|国税庁 相続時精算課税の選択|財務省 相続税・贈与税
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