「親の不動産を生前贈与で受け取りたいけど、どんな手続きが必要なの?」「税金はいくらかかるの?」。不動産の生前贈与を検討する際、こうした疑問を持つ方は非常に多いです。
不動産の生前贈与は、現金の贈与とは異なり、登記の手続きや複数の税金が発生するため、事前にしっかりと理解しておくことが重要です。手続きの流れや必要書類、かかる費用を把握しないまま進めてしまうと、想定外の税負担が生じる可能性もあります。
この記事では、不動産の生前贈与に必要な手続きの流れ、発生する税金の種類と金額の目安、そして節税に使える制度まで、わかりやすく解説していきます。

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不動産の生前贈与とは
不動産の生前贈与とは、土地や建物などの不動産を、所有者が生きているうちに子どもや孫などに無償で譲り渡すことです。相続の場合は亡くなった後に名義変更が行われますが、生前贈与では生きている間に名義を移転します。
不動産を贈与する場合は、法務局での所有権移転登記(名義変更)が必要です。登記が完了して初めて、法的に不動産の所有者が変わったことになります。
贈与の対象となる不動産には、自宅の土地・建物、マンション、アパート、田畑、駐車場など、さまざまな種類があります。
不動産の生前贈与にかかる3つの税金
1. 贈与税
不動産を生前贈与する場合、その不動産の評価額に応じて贈与税がかかります。暦年課税の場合、基礎控除110万円を超えた部分に対して10%~55%の累進税率で課税されます。
不動産の贈与税の計算では、土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」で評価されます。路線価は一般的に時価の80%程度、固定資産税評価額は時価の70%程度とされており、現金をそのまま贈与するよりも評価額が下がるケースがあります。
路線価や評価額の考え方は、最初はとっつきにくいものです。専門家に相談する前に、生前贈与の入門書で全体像をつかんでおくと、説明がすっと入ってきます。
2. 登録免許税
不動産の名義変更(所有権移転登記)を行う際にかかる税金です。生前贈与の場合、固定資産税評価額の2%が登録免許税としてかかります。
一方、相続による名義変更の場合は0.4%です。つまり、生前贈与は相続の5倍の登録免許税が必要になります。たとえば固定資産税評価額が2,000万円の不動産であれば、生前贈与では40万円、相続では8万円の登録免許税がかかります。
3. 不動産取得税
不動産を取得した際にかかる都道府県税です。相続で不動産を取得した場合はかかりませんが、生前贈与で取得した場合はかかります。
税率は原則4%ですが、住宅用の土地と建物は2027年3月31日までの特例で軽減されています。土地は固定資産税評価額の2分の1に対して3%(実質1.5%)、住宅用の建物は固定資産税評価額の3%です。

不動産の生前贈与の手続き5ステップ
ステップ1:贈与契約書を作成する
贈与者と受贈者の間で贈与契約書を作成します。不動産の場合は、物件の所在地・地番・家屋番号・面積などを明記する必要があります。後々のトラブルを防ぐためにも、公正証書にしておくと安心です。
ステップ2:必要書類を準備する
必要書類一覧
- 登記申請書
- 贈与契約書
- 贈与者の登記識別情報(権利証)または登記済証
- 贈与者の印鑑証明書(3か月以内のもの)
- 受贈者の住民票
- 固定資産評価証明書
- 不動産の登記事項証明書
ステップ3:法務局で所有権移転登記を申請する
必要書類がそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局に所有権移転登記を申請します。登録免許税はこのタイミングで納付します。
登記申請は自分で行うことも可能ですが、書類の不備があると補正や取り下げが必要になるため、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士への報酬は5万円~10万円程度が目安です。
登記が完了すると、新しい所有者に登記識別情報が通知されます。再発行ができない大切な書類なので、手提げ金庫や耐火金庫などで保管場所を決めておくと安心です。耐火性能は製品ごとに異なるので、仕様を確認して選んでください。
ステップ4:贈与税の申告・納付
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、所轄の税務署に贈与税の申告と納付を行います。暦年課税で110万円以下の場合は申告不要ですが、不動産の場合は評価額が110万円を超えるケースがほとんどのため、申告が必要になります。
ステップ5:不動産取得税の納付
登記完了後、数か月~半年程度で都道府県から不動産取得税の納税通知書が届きます。届いた通知書に基づいて期限内に納付します。

不動産の生前贈与で使える節税制度
相続時精算課税制度
60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選択できる制度です。累計2,500万円までは贈与税が非課税になり、2024年以降は年間110万円の基礎控除も新設されました。
値上がりが見込まれる不動産の場合、贈与時の評価額で相続税が計算されるため、将来的に有利になるケースがあります。
おしどり贈与(配偶者控除の特例)
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得資金を贈与する場合、基礎控除110万円に加えて最大2,000万円まで非課税になる特例です。つまり、合計2,110万円までは贈与税がかかりません。
住宅取得等資金の贈与税の非課税制度
直系尊属(父母・祖父母)から住宅の取得に充てるための資金贈与を受けた場合、一定額まで非課税になる制度です。省エネ等住宅で最大1,000万円、それ以外の住宅で最大500万円が非課税枠です。
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不動産の生前贈与が有利になるケース・不利になるケース
有利になるケース
収益物件を贈与する場合:アパートや駐車場など、賃料収入を生む不動産を生前贈与すれば、贈与後の収益は受贈者のものとなります。贈与者の相続財産が増えるのを防ぐ効果があります。
今後値上がりが見込まれる不動産:相続時精算課税を使えば、贈与時の評価額で相続税が計算されるため、将来の値上がり分は課税対象外になります。
不利になるケース
自宅を贈与する場合:相続であれば「小規模宅地等の特例」によって、土地の評価額を最大80%減額できる可能性があります。しかし、生前贈与ではこの特例を使えないため、相続の方が税負担が軽くなるケースが多いです。
登録免許税・不動産取得税の負担が大きい場合:前述のとおり、生前贈与では相続より高い登録免許税と、相続では不要な不動産取得税がかかります。

よくある質問(Q&A)
Q. 住宅ローンが残っている不動産でも生前贈与できますか?
A. 住宅ローンが残っている場合でも生前贈与は可能ですが、ローンの借り換えや金融機関の承諾が必要になるケースがあります。ローン残高を含めて贈与する場合は「負担付贈与」となり、税金の計算方法も変わるため、事前に金融機関や税理士に相談しましょう。
Q. 共有名義の不動産でも生前贈与できますか?
A. 共有名義の不動産の場合、自分の持分だけを贈与することは可能です。ただし、共有持分だけの贈与は後々の管理や売却でトラブルになりやすいため、他の共有者との話し合いが重要です。
Q. 不動産の生前贈与を司法書士に依頼した場合の費用は?
A. 司法書士への報酬は一般的に5万円~10万円程度が目安です。これに加えて、登録免許税や必要書類の取得費用(戸籍謄本・評価証明書など)がかかります。
不動産の生前贈与にかかる費用のシミュレーション
実際にどれくらいの費用がかかるのか、具体例でシミュレーションしてみましょう。
【ケース】固定資産税評価額2,000万円の土地と建物を、親から子へ生前贈与する場合
- 贈与税(暦年課税・一般税率):(2,000万円 – 110万円)x 45% – 265万円 = 約586万円
- 登録免許税:2,000万円 x 2% = 40万円
- 不動産取得税(土地の場合):2,000万円 x 1/2 x 3% = 30万円
- 司法書士報酬:約5万円~10万円
- 合計:約661万円~666万円
同じ不動産を相続で取得した場合、登録免許税は8万円(0.4%)で不動産取得税はゼロ。相続税は他の相続財産との合算で計算されますが、基礎控除(3,000万円 + 600万円 x 法定相続人数)内に収まれば非課税です。
このように、単純な費用比較だけで見ると相続の方が有利になるケースが多いのが不動産の特徴です。生前贈与を選択するメリットがあるかどうかは、将来の値上がり見込みや収益物件かどうかなど、個別の事情を踏まえて判断する必要があります。
判断の前提として、親がどの不動産をどうしたいと考えているかを、エンディングノートに書き出してもらうのも一つの方法です。エンディングノートに法的効力はありませんが、家族や専門家と話し合うときのたたき台になります。

Q. 生前贈与と相続、どちらが得になるかの判断基準は?
A. 「不動産の将来的な値上がりが見込めるか」「収益物件(アパート等)かどうか」「小規模宅地等の特例が使えるか」の3点が主な判断材料です。値上がり見込みがあり収益を生む物件であれば生前贈与が有利になりやすく、自宅用の土地で特例が使えるなら相続が有利です。
まとめ
不動産の生前贈与は、贈与税・登録免許税・不動産取得税という3つの税金がかかることを理解した上で、トータルのメリットを検討することが重要です。
収益物件の贈与や値上がりが見込まれる不動産の場合は生前贈与が有利になるケースがありますが、自宅の贈与では相続の方が税負担を抑えられる場合が多いです。
不動産の生前贈与は金額が大きいため、判断を誤ると数百万円単位の損失につながることもあります。実行前に、税理士や司法書士などの専門家に相談されることをおすすめします。
不動産の贈与に関する詳しい制度については、国税庁「贈与税」のページや、法務局「不動産登記」のページも参考にしてください。

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