「老後の生活にはいったいいくらお金が必要なのだろう」「年金だけで暮らしていけるのだろうか」。こうした不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
2019年に話題となった「老後2,000万円問題」をきっかけに、老後資金への関心は一気に高まりました。しかし、必要な金額は世帯の状況やライフスタイルによって大きく異なります。
この記事では、公的なデータをもとに老後の生活費の平均額や年金受給額を整理し、夫婦世帯・独身世帯それぞれに必要な資金の目安を解説します。さらに、今からできる具体的な準備方法もご紹介していきます。

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老後の生活費は平均いくらかかる?
夫婦世帯の場合
総務省の「家計調査報告(2025年平均)」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均消費支出は月額約26.4万円です。これに税金や社会保険料などの非消費支出(約3.3万円)を加えると、月々の支出合計は約29.7万円になります。
内訳としては、食費が約7万円と最も大きく、次いで交通・通信費、教養娯楽費、光熱・水道費、保健医療費などが続きます。
独身世帯の場合
65歳以上の単身無職世帯の場合、平均消費支出は月額約14.8万円です。非消費支出を加えた月々の支出合計は約16.1万円となっています。
単身世帯は住居費の割合が高い傾向にあります。持ち家であれば住居費は抑えられますが、賃貸の場合は家賃分が大きな負担になります。
平均と比べる前に、まずは自分の家の支出を数か月分つけてみると、老後に必要な生活費がぐっと具体的になります。
年金はいくらもらえる?
2026年度の年金額
2026年度の年金額は前年度比で引き上げられています。
- 国民年金(老齢基礎年金)の満額:月額約7万608円(前年度比1.9%増、初めて7万円台に到達)
- 厚生年金のモデル年金(夫婦2人分):月額約23万7,279円(前年度比2.0%増)
ただし、厚生年金の「モデル年金」は、平均的な賃金で40年間厚生年金に加入した夫と、40年間専業主婦だった妻の世帯を想定した金額です。実際の受給額は加入期間や報酬額によって異なります。
年金の平均受給額
実際の厚生年金(国民年金部分含む)の平均受給月額は約15万289円です。男女別では、男性が約17万円、女性が約11.1万円と大きな差があります。
国民年金のみの場合(自営業者など)、平均受給月額は約5万9,310円です。

老後資金はいくら必要?世帯別の試算
夫婦世帯の場合
65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、月々の支出約29.7万円に対し、年金などの実収入は約25.4万円です。つまり、毎月約4.3万円の不足が生じます。
65歳から90歳までの25年間で計算すると、不足額は約1,290万円になります。さらに、介護費用や住宅の修繕費、葬儀費用なども考慮すると、ゆとりを持った準備として2,000万円~3,000万円程度は見込んでおきたいところです。
独身世帯の場合
独身世帯の場合、月々の支出約16.1万円に対し、実収入は約13.1万円です。毎月約3万円の不足が生じ、25年間で約900万円の不足額になります。
ただし、独身世帯は介護が必要になった場合に家族のサポートを受けにくいため、施設入居費用なども含めると、1,500万円~2,500万円程度の準備が安心です。
ゆとりある老後を送るには
生命保険文化センターの調査によると、ゆとりある老後生活に必要な費用は月額約37.9万円とされています。旅行や趣味、孫への出費なども含めた金額です。この水準の生活を送るには、年金だけでは到底足りないため、より多くの老後資金が必要になります。

老後資金を準備する5つの方法
1. つみたてNISA・新NISAを活用する
2024年から始まった新NISAでは、年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)まで非課税で投資が可能です。運用益が非課税になるため、長期的な資産形成に向いています。
投資は元本割れのリスクもあるため、始める前に入門書で仕組みや注意点をひと通り確認しておくと安心です。
2. iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する
掛金が全額所得控除になるため、現役時代の税金を抑えながら老後資金を積み立てられます。ただし、原則として60歳まで引き出せない点には注意が必要です。
3. 繰下げ受給を検討する
年金の受給開始を65歳から繰り下げると、1か月あたり0.7%ずつ年金額が増加します。たとえば70歳まで繰り下げると42%増、75歳まで繰り下げると84%増になります。健康状態や生活設計に合わせて検討する価値があります。
4. 生活費を見直す
固定費の見直し(保険・通信費・サブスクリプションなど)は、即効性のある対策です。月1万円の固定費を削減できれば、25年間で300万円の効果があります。
5. できるだけ長く働く
60歳以降も働き続けることで、年金受給までの「空白期間」をなくし、貯蓄の取り崩しを遅らせることができます。再雇用制度やシルバー人材センターの活用なども選択肢になります。
物価上昇(インフレ)への備えも重要
近年は食料品やエネルギーの価格上昇が続いています。年2%の物価上昇が30年続くと、現在の2,000万円の実質的な価値は約1,100万円まで目減りするとされています。
預貯金だけでなく、物価上昇に対応できる資産(投資信託・不動産・株式など)を組み合わせて準備することが大切です。

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50代から始める老後資金準備のポイント
50代は老後資金の準備において重要な時期です。子どもが独立して教育費の負担が減るタイミングでもあり、浮いた分を老後資金に回せる可能性があります。
退職金の使い道を計画する
退職金は老後資金の大きな柱になります。しかし、退職金を住宅ローンの完済や車の購入などで使い切ってしまうと、老後の生活が苦しくなるリスクがあります。退職金は「生活資金」「運用資金」「予備費」の3つに分けて計画的に管理することが大切です。
住宅ローンは退職までに完済を目指す
年金生活に入ってからも住宅ローンの返済が続くと、家計を圧迫します。繰り上げ返済や借り換えを検討して、退職までの完済を目指しましょう。
保険の見直し
子どもが独立した後は、大型の死亡保険は不要になるケースが多いです。必要保障額を見直し、保険料を削減して貯蓄に回すことも検討しましょう。医療保険は高額療養費制度との重複を確認し、本当に必要な保障だけに絞るのがポイントです。

公的年金以外の収入源を確保する方法
年金だけに頼らない老後を実現するために、複数の収入源を持つことも検討しましょう。
不動産収入:所有する不動産を賃貸に出すことで、毎月の安定収入を確保できます。ただし、空室リスクや修繕費用なども考慮する必要があります。
個人年金保険:現役時代に積み立てておくことで、公的年金に上乗せして受け取れます。受取期間を「終身」にすれば、長生きリスクにも対応できます。
シニア向けの就労:週2~3日程度のパートタイム就労でも、月に数万円の収入になります。社会とのつながりを維持する効果もあり、心身の健康にも良いとされています。
よくある質問(Q&A)
Q. 老後資金の準備は何歳から始めるべきですか?
A. 早ければ早いほど有利です。20代・30代から始めれば、複利効果により少額の積立でも大きな資産になる可能性があります。50代からでも遅くはありませんが、より積極的な準備が必要になります。
Q. 持ち家と賃貸で老後の必要資金は変わりますか?
A. 大きく変わります。持ち家であれば住居費の負担が軽くなりますが、修繕費やリフォーム費用がかかります。賃貸の場合は家賃が毎月の固定支出となるため、25年間で家賃月額×300か月分が追加で必要になります。
Q. 年金だけで生活することは可能ですか?
A. 夫婦で厚生年金を受給している場合は、節約すれば年金のみで基本的な生活費をまかなえるケースもあります。ただし、医療費や介護費用、突然の出費に備えた余裕資金がないと不安が残ります。
老後資金を守るためのリスク管理
詐欺・投資トラブルに注意
退職金を手にした直後は、高配当をうたう投資案件や怪しいセミナーの勧誘を受けやすい時期です。「元本保証で年利10%」「今だけの特別案件」などの甘い言葉には注意しましょう。金融庁に登録されていない業者との取引は避けるのが鉄則です。
認知症になった場合の資産凍結リスク
認知症になると、銀行口座の解約や不動産の売却ができなくなる「資産凍結」のリスクがあります。家族信託や任意後見制度を活用して、判断能力があるうちに備えておくことが重要です。
口座や保険、年金の情報をエンディングノートにまとめておくと、いざというときに家族が状況を把握しやすくなります。なお、エンディングノートには法的効力はありません。
配偶者に先立たれた場合の年金減額
夫婦で年金を受給している場合、どちらかが亡くなると世帯の年金収入が大きく減少します。遺族年金の受給要件や金額を事前に確認し、保険や貯蓄で補う準備をしておきましょう。
まとめ
老後資金の必要額は、世帯の状況やライフスタイルによって異なりますが、目安としては夫婦世帯で2,000万円~3,000万円、独身世帯で1,500万円~2,500万円程度を見込んでおくと安心です。
年金額や生活費の平均値は、調査年度や個人の状況によって異なります。より正確な必要額を把握するには、ねんきんネットで自分の年金見込額を確認し、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。
老後資金について詳しく知りたい方は、金融庁のホームページや、生命保険文化センターの情報も参考にしてください。
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