高齢者が賃貸住宅を借りようとしたとき、「年齢を理由に入居を断られた」という話を耳にしたことはないでしょうか。実際、管理会社の約半数が高齢者の入居を断った経験があるという調査結果もあり、シニアの賃貸入居は依然としてハードルが高い現状があります。
この記事では、高齢者が賃貸入居を拒否される理由、孤独死と告知義務の関係、大家さんの不安を解消する保険や制度について詳しく解説します。賃貸での暮らしを希望するシニアの方やそのご家族に役立つ情報をまとめました。

高齢者が賃貸入居を拒否される理由
管理会社や大家さんが高齢者の入居に消極的になる背景には、いくつかの不安要素があります。
孤独死への不安が最大の理由
調査によると、管理会社が単身高齢者の入居で最も懸念しているのは「孤独死」で、全体の84.0%が不安要素として挙げています。孤独死が発生すると、事故物件として扱われる可能性があり、物件の資産価値が下がることへの懸念もあります。
事故物件化のリスク
孤独死が発生した場合、その物件が「事故物件」として扱われるかどうかが大家さんの大きな心配事です。事故物件化すると、次の入居者への告知義務が発生し、家賃を下げざるを得なくなるケースがあります。
残置物の処理問題
入居者が亡くなった場合、室内の家財や荷物(残置物)の処理が問題になります。相続人と連絡が取れない場合、大家さんが勝手に処分できないため、長期間放置される可能性があります。
入居する側としては、元気なうちに少しずつ持ち物を減らしておくと、残置物の心配を小さくできます。大容量のゴミ袋を用意しておくと、不用品の仕分けもはかどります。
家賃の滞納リスク
認知症の進行や体調悪化により、家賃の支払いが滞るリスクも懸念材料のひとつです。年金収入が少ない場合は、保証人や保証会社の審査も厳しくなる傾向があります。
孤独死と告知義務の関係
孤独死が発生した場合、その物件は「事故物件」になるのでしょうか。国土交通省が公表している「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、自然死や不慮の事故死については原則として告知義務はないとされています。
ただし、遺体の発見が遅れて特殊清掃が必要になった場合は、告知義務が生じる可能性があります。つまり、孤独死そのものが問題なのではなく、「発見の遅れ」が事故物件化の大きな要因になっているのです。
この点から、見守りサービスの活用によって早期発見体制を整えることが、大家さんの不安解消にもつながると言えます。
サービスの契約とは別に、家族が自分で設置できる見守りカメラを使う方法もあります。スマホから室内の様子を確認できるタイプが多いので、離れて暮らす家族の安心材料になります。

大家さんの不安を解消する保険・制度
孤独死保険(少額短期保険)
孤独死が発生した場合の原状回復費用や家賃損失を補償する保険です。入居者本人が加入するタイプと、大家さんが加入するタイプがあり、月額数百円〜数千円程度で利用できます。この保険があることで、大家さんが高齢者の入居を受け入れやすくなるケースが増えています。
改正住宅セーフティネット法による「居住サポート住宅」
2025年10月施行の改正住宅セーフティネット法では、「居住サポート住宅」という新しい制度が始まりました。居住支援法人が大家さんと連携し、ICTを活用した安否確認や見守り、困りごとへの相談対応などを提供する仕組みです。
この制度により、大家さんは入居者の安否を把握できる安心感が得られ、高齢者は住まいを確保しやすくなります。
見守りサービスの活用
民間の見守りサービスを利用する方法もあります。センサー型の見守り機器やスマートフォンアプリを使って、日常の活動を見守り、異常があれば家族や関係者に通知するサービスです。月額500円〜3,000円程度で利用できるものが多くあります。
月額サービスのほかに、ボタンを押すだけで家族のスマホなどに知らせられる緊急通報ボタンを自宅に置いておく方法もあります。通知先や対応機器は製品ごとに異なるので、仕様を確認して選んでください。
身元保証サービス
保証人がいない高齢者向けの身元保証サービスを利用する方法もあります。司法書士や社会福祉法人が身元保証人の代わりを務め、入居中の見守りから死後の事務処理までをサポートするサービスです。
高齢者が賃貸を借りるためのコツ
高齢者歓迎物件を探す
「シニア歓迎」「高齢者相談可」などの条件で物件を検索すると、高齢者の入居に理解のある物件が見つかりやすくなります。自治体の住宅相談窓口や、居住支援法人に相談するのもおすすめです。
家賃保証会社を利用する
連帯保証人が見つからない場合は、家賃保証会社の利用が有効です。保証料は家賃の0.5〜1ヶ月分程度で、保証人の代わりを務めてもらえます。
UR賃貸住宅を検討する
UR賃貸住宅は礼金・仲介手数料・更新料が不要で、保証人も不要です。高齢者の入居に対する年齢制限もなく、シニアにとって利用しやすい賃貸住宅のひとつです。
公営住宅に応募する
自治体が運営する公営住宅は、家賃が収入に応じて設定されるため、年金生活者にとって経済的な選択肢になります。高齢者向けの優先枠を設けている自治体もあります。

改正住宅セーフティネット法の詳細
2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法は、単身高齢者などの「住宅確保要配慮者」が安心して賃貸住宅に入居できるよう、大家さんと入居者の双方を支援する法律です。
居住サポート住宅の仕組み
改正法の目玉である「居住サポート住宅」は、居住支援法人がICTを活用した安否確認や生活相談を提供する住宅です。大家さんは入居者の安否を把握できるため、孤独死への不安が軽減されます。入居者にとっても、困ったときの相談先が確保されるメリットがあります。
死後事務委任契約との組み合わせ
賃貸入居を円滑にするためには、死後事務委任契約を結んでおくことも有効です。入居者が亡くなった場合の残置物の処理や退去手続きを事前に委任しておくことで、大家さんの不安を大きく軽減できます。
孤独死を防ぐための日常的な工夫
地域とのつながりを維持する
近隣住民との挨拶や、地域の集まりへの参加は、孤立を防ぐ基本的な方法です。日頃から顔が見える関係を作っておくことで、異変があった際に気づいてもらいやすくなります。
定期的な家族との連絡
電話やビデオ通話などで、家族と定期的に連絡を取る習慣をつけておきましょう。毎日決まった時間に連絡を取り合うだけでも、異変の早期発見につながります。
スマホの操作が苦手な方には、声で呼びかけるだけで家族と通話できる画面付きのスマートスピーカーを使う家庭もあります。
センサー型見守りサービスの導入
室内にセンサーを設置し、一定時間動きが検知されない場合に家族や管理会社に通知するサービスがあります。プライバシーを守りながら安否確認ができるため、見守りカメラに抵抗がある方にもおすすめです。

よくある質問(Q&A)
Q. 何歳から賃貸が借りにくくなりますか?
A. 明確な年齢基準はありませんが、一般的には65歳以上で審査が厳しくなる傾向があります。特に単身の高齢者は断られやすい傾向にあります。
Q. 孤独死保険は入居者が加入するものですか?
A. 入居者が加入するタイプと、大家さん(オーナー)が加入するタイプの両方があります。入居時に大家さんから保険加入を求められるケースもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
Q. 生活保護を受けていても賃貸は借りられますか?
A. 生活保護受給者でも賃貸住宅を借りることは可能です。住宅扶助の範囲内であれば家賃が公費から支給されるため、大家さんにとっては家賃滞納リスクが低いというメリットもあります。生活保護受給者向けの物件を扱っている不動産会社もあります。
Q. 連帯保証人がいない場合はどうすればいいですか?
A. 家賃保証会社を利用する方法があります。保証会社が連帯保証人の代わりを務め、保証料は家賃の0.5〜1ヶ月分程度です。また、自治体の居住支援法人に相談すると、身元保証の支援を受けられる場合もあります。
Q. 賃貸契約で年齢制限はありますか?
A. 法律上、年齢だけを理由に賃貸契約を拒否することは認められていませんが、実態としては高齢者の入居審査が厳しい物件は存在します。UR賃貸住宅や公営住宅、シニア向け物件を中心に探すと、年齢を理由に断られるリスクを減らせます。
住まいの見通しが立ったら、将来のお墓の準備も並行して考え始める方もいます。お墓を新しく建てる場合の費用を比べたいときは、墓石ナビのように複数の石材店の見積もりを取り寄せられるサービスもあります。見積もりは無料で契約の義務はないと案内されています。詳しい内容は公式サイトで確認できます。

まとめ|保険と制度を活用してシニアの住まいを確保しよう
高齢者の賃貸入居は依然として課題が多い分野ですが、孤独死保険や改正住宅セーフティネット法、見守りサービスなどの活用により、状況は改善しつつあります。
賃貸での暮らしを希望するシニアの方は、保険や保証サービスを活用して大家さんの不安を解消し、入居のハードルを下げる工夫をしていきましょう。UR賃貸や公営住宅など、高齢者が借りやすい住まいの選択肢も併せて検討してみてください。
高齢者の賃貸入居をめぐる環境は、法改正や民間サービスの充実によって着実に改善されつつあります。しかし、いまだに入居拒否を経験する高齢者は少なくありません。入居を成功させるためには、孤独死保険や見守りサービスの活用で大家さんの不安を解消し、保証会社を利用して信用を補完するなど、複数の対策を組み合わせることが効果的です。
自治体の居住支援窓口や地域包括支援センターでは、住まいの相談に応じてくれるスタッフがいます。一人で悩まず、まずは相談することから始めてみてください。高齢になっても安心して暮らせる住まいを見つけるために、使える制度は積極的に活用しましょう。
参考リンク:政府広報オンライン|改正住宅セーフティネット法、SUUMO|高齢者の入居拒否を解決する仕組み、WHILL|免許返納の特典とメリット


