家族が亡くなり、証券会社に保有していた株式や投資信託を相続することになった場合、どのように手続きを進めればよいのでしょうか。不動産の相続登記に比べると情報が少なく、「何から始めていいか分からない」と戸惑う方も多いものです。
株式の相続手続きは、証券会社への連絡から始まり、必要書類の提出、口座の移管という流れで進みます。書類に不備がなければ、通常2〜4週間程度で完了します。
この記事では、証券会社での株式相続の手続きを4つのステップに分けて、必要書類や注意点とあわせて解説します。

ステップ1:証券会社に連絡して口座を凍結する
故人(被相続人)が証券口座を持っていた証券会社に、できるだけ早く連絡を入れましょう。証券会社に死亡の事実を伝えると、口座は凍結され、売買や出金ができなくなります。
連絡時に伝えること
- 口座名義人が亡くなったこと
- 亡くなった日付
- 連絡者と故人の関係(相続人であること)
口座の特定方法
故人がどの証券会社に口座を持っていたか分からない場合は、以下の方法で調べられます。
- 証券会社からの郵便物やメールを確認
- 通帳の取引履歴に証券会社からの入出金がないか確認
- 確定申告書の配当所得や譲渡所得の記載を確認
- 証券保管振替機構(ほふり)への照会:故人名義の上場株式等の口座開設先を調べることができます(手数料あり)
証券保管振替機構(ほふり)への「登録済加入者情報の開示請求」を利用すると、故人がどの証券会社に口座を持っていたか一括で確認できます。相続人であれば請求が可能です。
口座探しは家族にとって大きな負担になりがちです。ご自身の備えとしては、利用している証券会社や銀行の一覧をエンディングノートにまとめておくと、家族が迷わずに済みます。なお、エンディングノートには法的効力はありません。
ステップ2:相続手続きに必要な書類を準備する
証券会社に連絡すると、相続手続きに関する案内書類(相続手続依頼書など)が送られてきます。あわせて、以下の書類を準備しましょう。
一般的に必要となる書類
- 相続手続依頼書:証券会社所定の書類(相続人全員の署名・実印が必要な場合が多い)
- 被相続人の戸籍謄本:出生から死亡までの連続した戸籍(法定相続人の確認に使用)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書(発行から6か月以内が一般的)
- 遺産分割協議書(法定相続分以外で分割する場合)
- 遺言書(ある場合。自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済みのもの)
- 被相続人の死亡を確認できる書類(死亡診断書のコピーなど)
戸籍謄本や印鑑証明書は銀行など他の手続きでも使うため、書類ファイルで種類ごとに分けて保管しておくと、提出のたびに探さずに済みます。
法定相続情報一覧図の活用
法務局が無料で交付する「法定相続情報一覧図の写し」を取得しておくと、戸籍謄本の束の代わりに使えるため、手続きがスムーズになります。複数の証券会社や銀行で相続手続きを行う場合は特に便利です。

ステップ3:相続人の証券口座を開設する
株式を相続するためには、相続人名義の証券口座が必要です。故人と同じ証券会社に口座を持っていない場合は、新しく口座を開設します。
口座開設のポイント
- 故人と同じ証券会社に開設するのが手続き上もっともスムーズ
- 別の証券会社に移管したい場合は、一旦同じ証券会社で相続手続きを完了させてから移管する方法が一般的
- ネット証券の場合、オンラインで口座開設できるためスピーディー
相続人が証券口座を持っていないと、株式の移管手続きが進められません。書類の準備と並行して、早めに口座開設を済ませておきましょう。
ステップ4:書類を提出し、株式を移管する
必要書類が揃ったら、証券会社に提出します。書類に不備がなければ、通常2〜4週間程度で故人の口座から相続人の口座へ株式が移管されます。
移管後にやること
- 残高の確認:移管された株式・投資信託・預り金などが正しいか確認
- 売却の検討:そのまま保有し続けるか、売却するかを判断
- 相続税の申告:相続財産の評価額が基礎控除を超える場合は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告が必要
株式の相続税評価額はどう決まる?
相続税の申告にあたって、株式の評価額を算出する必要があります。上場株式と非上場株式では評価方法が異なります。
上場株式の評価方法
上場株式は、以下の4つの価格のうちもっとも低い価格で評価されます。
- 相続開始日の終値
- 相続開始月の毎日の終値の月平均
- 相続開始月の前月の毎日の終値の月平均
- 相続開始月の前々月の毎日の終値の月平均
相続開始日が休日等で終値がない場合は、その日に最も近い日の終値を使います。
投資信託の評価方法
投資信託は、相続開始日の基準価額から信託財産留保額等を差し引いた金額で評価されます。

特別口座の株式を相続する場合
2009年の株券電子化以前に証券会社に預けられていなかった株式は、信託銀行などが管理する「特別口座」に記録されています。この場合の手続きは通常の証券口座とは異なります。
特別口座の確認方法
- 株式の発行会社に問い合わせ、どの信託銀行が特別口座を管理しているか確認
- 該当する信託銀行に連絡し、相続手続きの案内を受ける
- 証券会社の場合と同様の書類を用意し、提出する
株式相続の手続きを進めるうえでの注意点
1. 手続きに期限はないが早めの対応を
株式の名義変更そのものに法律上の期限はありませんが、相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。また、口座が凍結されている間は売買ができないため、相場変動のリスクがあります。
2. 配当金の取り扱い
故人の口座が凍結されていても、配当金は発生します。名義変更が完了するまでの間の配当金は、相続人の代表者が受け取ることになります。
3. NISA口座の株式は移管できない
故人がNISA口座で保有していた株式は、相続人のNISA口座には移管できません。相続人の一般口座または特定口座に移管されます。
4. 複数の証券会社に口座がある場合
故人が複数の証券会社に口座を持っていた場合は、各証券会社でそれぞれ相続手続きが必要です。法定相続情報一覧図を複数部取得しておくと、並行して手続きを進められます。
証券会社別の相続手続きの特徴
証券会社によって相続手続きの進め方や対応に違いがあります。主要な証券会社の特徴を把握しておきましょう。
対面証券(野村証券・大和証券・SMBC日興証券など)
- 支店窓口で対面相談が可能
- 担当者が手続き全体をサポートしてくれる場合が多い
- 書類の確認も窓口で直接行える
- 郵送でも手続き可能だが、窓口のほうがスムーズ
ネット証券(SBI証券・楽天証券など)
- 手続きは基本的に郵送で進める
- 専用の相続手続きページやコールセンターが用意されている
- 書類のダウンロードがオンラインで可能な場合がある
- 手数料が低い分、サポートは自分で調べて進める必要がある場合も
いずれの場合も、まずは証券会社の「相続手続き窓口」に電話し、案内に沿って進めるのが基本です。書類の書き方や必要書類は証券会社ごとに微妙に異なるため、送られてくる案内をよく確認しましょう。
相続した株式の確定申告と税金
株式を相続しただけでは所得税はかかりませんが、相続後に株式を売却した場合は譲渡所得税の対象になります。
取得費の考え方
相続で取得した株式の取得費(原価)は、原則として被相続人(故人)が購入したときの取得価額をそのまま引き継ぎます。故人がいつ・いくらで購入したか分からない場合は、売却代金の5%を取得費とする概算取得費を使うこともできます。
相続税の取得費加算の特例
相続開始から3年10か月以内に相続した株式を売却した場合、「相続税の取得費加算の特例」を利用できます。この特例を使うと、支払った相続税のうち一定額を取得費に加算でき、譲渡所得税を減らせます。
相続税の申告や特例の考え方を自分でも確認しておきたい方は、申告の流れを解説した書籍を手元に置いておくと、税理士に相談するときも話がスムーズになります。
株式相続の手続きでよくある質問
Q. 相続した株式を売却したら税金はかかりますか?
A. はい。相続で取得した株式を売却した場合、譲渡所得として所得税・住民税が課税されます。取得費は被相続人の取得価額を引き継ぐのが原則です。相続税の取得費加算の特例を利用できる場合もあります。
Q. 相続人が複数いる場合、株式はどう分けますか?
A. 遺言書がない場合は、遺産分割協議で決めます。株式を現物のまま分割する方法、売却して代金を分ける方法(換価分割)、1人が取得して他の相続人に代償金を支払う方法(代償分割)などがあります。
Q. 証券会社に連絡するのは四十九日の後でも大丈夫ですか?
A. 法律上の期限はないため、四十九日の後でも手続き可能です。ただし、口座凍結前に不正な取引が行われるリスクを避けるため、できるだけ早く連絡することをおすすめします。

相続した株式をそのまま保有する場合の注意点
相続した株式を売却せずにそのまま保有し続ける場合にも、いくつか注意しておくべきポイントがあります。
特定口座への移管を検討する
相続により取得した株式が一般口座に入っている場合、売却時に自分で確定申告が必要になります。特定口座(源泉徴収あり)に移管しておけば、証券会社が税金の計算と納付を代行してくれるため、手間が大幅に減ります。
配当金の受取方法を確認する
株式を保有していると配当金が発生します。相続後は受取方法が「配当金領収証方式」になっていることがあるため、銀行口座への直接振込(株式数比例配分方式)に変更しておくと便利です。NISA口座で配当金の非課税を受けるためにも、株式数比例配分方式を選択しておく必要があります。
株式の手続きと並行して、お墓の準備も考え始める方がいます。新しくお墓を建てる場合は、墓石ナビのように複数の石材店の見積もりを無料で取り寄せて比べられるサービスもあります。契約の義務はなく、民営霊園は対象外とされているため、詳しくは公式サイトでご確認ください。

まとめ|株式の相続は4ステップで進めよう
相続した株式の手続きは、「証券会社への連絡→必要書類の準備→相続人の口座開設→書類提出・株式移管」の4ステップで進めます。書類に不備がなければ2〜4週間程度で完了するのが一般的です。
相続税の申告期限(10か月以内)に間に合うよう、早めに動き始めることが大切です。手続きに不安がある場合は、証券会社の相続専用窓口や、相続に詳しい税理士・司法書士に相談してみてください。
詳しくは以下の外部サイトも参考にしてみてください。


