「介護が必要な状態なのに、認定が下りなかった」「要介護度が思ったより低くて、受けたいサービスが使えない」。このような経験をされた方は少なくありません。
介護認定の結果に納得できない場合、「不服申立て(審査請求)」や「区分変更申請」という方法で対処できます。ただし、どちらの方法を選ぶかで手続きの流れや結果が出るまでの期間が大きく異なります。
この記事では、介護認定が却下(非該当)となった場合や、認定結果に不満がある場合の具体的な対処法を詳しく解説します。

介護認定の仕組みをおさらい
介護保険サービスを利用するには、まず市区町村に要介護認定の申請を行います。認定調査員による訪問調査と主治医の意見書をもとに、コンピューターによる一次判定、そして介護認定審査会による二次判定を経て、認定結果が通知されます。
判定結果は「非該当(自立)」「要支援1・2」「要介護1~5」のいずれかです。非該当と判定されると介護保険サービスは利用できませんし、要介護度が低いと受けられるサービスの種類や量が限られます。
認定結果に納得できないときの2つの選択肢
認定結果に不満がある場合、取れる対応策は主に2つあります。
- 不服申立て(審査請求):都道府県の介護保険審査会に審査請求を行い、認定の妥当性を争う
- 区分変更申請:市区町村に対して、心身の状態が変わったことを理由に再度認定調査を受ける
- 多くのケースでは区分変更申請のほうが実用的とされている
不服申立て(審査請求)の手続き
申立て先と期限
不服申立ては、各都道府県に設置されている「介護保険審査会」に対して行います。認定結果の通知を受けた日の翌日から3か月以内に審査請求書を提出する必要があります。
手続きの流れ
- 審査請求書を作成する(都道府県のホームページや窓口で書式を入手)
- 介護保険審査会に審査請求書を提出する
- 処分庁(市区町村)が弁明書を提出する
- 審査会が書面審理を行う
- 裁決が下される(認容・棄却・却下のいずれか)
審査請求が認められた場合(認容)、現在の認定が取り消され、市区町村が再度認定を行います。ただし、結論が出るまでに数か月から半年以上かかるケースも珍しくないため、その間は現在の認定結果に基づいたサービスしか利用できません。
手続きが長引くと、認定結果の通知書や審査請求書の控えなど書類が増えていきます。書類ファイルに1つにまとめておくと、ケアマネジャーや窓口に相談するときもすぐに取り出せます。

区分変更申請のほうが実用的なケースが多い
区分変更申請とは
区分変更申請は、心身の状態が変化したことを理由に、市区町村に対して再度要介護認定を申請する方法です。手続きは新規の認定申請とほぼ同じ流れで、認定調査と審査会による判定が行われます。
不服申立てとの違い
- 結果が出るまでの期間:区分変更申請は原則30日以内に結果が通知される(不服申立ては数か月)
- 申請先:区分変更申請は市区町村(不服申立ては都道府県の介護保険審査会)
- 回数制限:区分変更申請に回数制限はなく、何度でも申請可能
- 新たな調査:区分変更では新たに訪問調査が行われるため、状態を改めて評価してもらえる
区分変更申請は「状態が変化した」ことが前提です。直前の認定結果が出たばかりで状態に変化がない場合は、ケアマネジャーや主治医と相談して適切なタイミングを判断しましょう。
認定で不利にならないためのポイント
1. 訪問調査で「普段の状態」を正直に伝える
認定調査の場面では、つい「自分でできます」と頑張ってしまう高齢者の方が多いですが、それでは普段の状態が正しく伝わりません。調査当日だけ元気に振る舞ってしまう「見栄効果」は認定結果を下げる大きな原因です。
家族が同席して、普段の様子を補足して伝えることが重要です。具体的にどんな場面で困っているか、メモにまとめておくとよいでしょう。
日々の様子は、介護日記のようなノートに「いつ・何に困ったか」を書き留めておくと、調査当日に具体的なエピソードとして伝えやすくなります。
2. 主治医の意見書が重要
主治医に現在の状態を正確に伝えておくことも大切です。主治医意見書は二次判定で大きな影響を持つため、普段の診察時に介護で困っていることを伝えておきましょう。
3. ケアマネジャーに相談する
認定結果に不満がある場合は、担当のケアマネジャーに相談しましょう。ケアマネジャーは認定の仕組みに詳しいため、区分変更申請のタイミングや調査時のアドバイスをもらえます。

非該当(自立)と判定された場合でも使えるサービス
介護認定で「非該当」と判定されても、以下のサービスは利用できる可能性があります。
- 地域支援事業の総合事業:市区町村が実施する介護予防・日常生活支援総合事業(基本チェックリストの該当者が対象)
- 地域包括支援センターの相談:介護や生活の困りごとについて無料で相談できる
- 自治体独自の福祉サービス:配食サービスや見守りサービスなど
- 民間の介護サービス:介護保険外の自費サービス
特に「基本チェックリスト」に該当すれば、要介護認定を受けていなくても総合事業のサービス(訪問型・通所型)を利用できます。お住まいの地域包括支援センターに相談してみてください。
認定の結果を待つ間も、自宅での転倒が心配な場合は、工事不要で置くだけで使える手すりを取り入れている家庭もあります。設置場所に合うサイズかどうか、仕様を確認してから選んでください。
よくある質問(Q&A)
Q. 不服申立てと区分変更申請は同時にできる?
はい、同時に進めることは可能です。ただし、区分変更申請で新しい認定が出ると、不服申立ての対象となった元の認定が変更されるため、審査請求の意味がなくなるケースもあります。ケアマネジャーと相談して判断しましょう。
Q. 不服申立ての費用はかかる?
審査請求自体に費用はかかりません。審査請求書の書式は都道府県のホームページからダウンロードできます。弁護士に依頼する場合は別途費用がかかりますが、本人や家族だけでも申立ては可能です。
Q. 認定結果が出るまでの間、サービスは使える?
区分変更申請中は「暫定ケアプラン」を作成してサービスを利用できます。ただし、結果によっては自己負担額が変わる場合があるため、ケアマネジャーと相談のうえで利用しましょう。
認定調査で伝えるべきことチェックリスト
認定調査は通常30分~1時間程度で行われます。限られた時間で普段の状態を正しく伝えるために、以下の項目を事前にメモにまとめておくと効果的です。
- 食事:自分で食べられるか、こぼすことはないか、食事の準備はできるか
- 排泄:トイレまで自分で行けるか、失禁はあるか、おむつを使っているか
- 入浴:ひとりで入浴できるか、洗髪・洗体に助けが必要か
- 移動:屋内の移動は安全にできるか、転倒したことはあるか、杖や車いすを使っているか
- 着替え:ひとりで着替えられるか、ボタンの留め外しはできるか
- 認知面:物忘れの程度、日時の感覚、道に迷うことがあるか
- 問題行動:夜間の徘徊、暴言・暴力、不潔行為、火の始末の不安など
- 医療処置:服薬管理、インスリン注射、胃ろう、喀痰吸引など
移動の項目で「杖を使っている」場合は、普段使っている杖を調査員に見せると状況が伝わりやすくなります。これから杖を用意する方は、持ち運びしやすい軽量タイプも選択肢です。
調査当日にいつもと違って調子がいい場合もあります。そのようなときは、普段はもっと大変ですと正直に伝えることが大切です。
主治医意見書で差がつくポイント
主治医意見書は認定審査会の二次判定で重要な資料になります。主治医に意見書を書いてもらう前に、以下のことを伝えておくと、より正確な意見書が作成されます。
- 日常生活で困っていること(家事ができない、転倒が増えたなど)
- 認知症の症状があれば具体的なエピソード
- 介護者の負担状況(介護者自身の健康問題など)
- リハビリの必要性や見通し
普段の診察時間は限られているため、メモを持参して効率的に伝えましょう。また、かかりつけ医が介護の実態を十分に把握していない場合は、診察に家族が同席して情報を補足することも検討してください。
主治医意見書の内容によって認定結果が変わることもあるため、医師とのコミュニケーションは非常に重要です。
地域包括支援センターを頼ろう
介護認定の結果に納得できないときは、まず地域包括支援センターに相談することをおすすめします。地域包括支援センターは、介護・医療・福祉に関する総合的な相談窓口です。主任ケアマネジャー、社会福祉士、保健師が常駐しており、認定結果への対処法についても具体的なアドバイスをもらえます。
利用料は無料で、本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。お住まいの地域の地域包括支援センターは、市区町村のホームページで検索できます。電話での相談も可能ですので、わざわざ足を運ぶのが難しい場合でも気軽に利用できます。
なお、地域包括支援センターは全国に約5,400か所以上設置されており、中学校区にひとつ程度の割合で存在しています。名称は地域によって異なることがあり、「高齢者あんしんセンター」「お年寄り相談センター」などと呼ばれることもあります。
介護に関する悩みはひとりで抱え込まず、専門家の力を借りて解決への道を探しましょう。
介護の手続きと並行して、家族のお墓の準備を考え始める場面もあります。これから新しくお墓を建てる、あるいは建て替えを考える場合は、墓石ナビのように複数の石材店の見積もりを比べられるサービスもあります。見積もりは無料で契約の義務もないと公式に案内されています。詳しくは公式サイトで確認できます。

まとめ
介護認定が却下されたり、想定より低い認定が出た場合でも、不服申立て(審査請求)や区分変更申請で対処する方法があります。多くのケースでは、結果が早く出る区分変更申請のほうが実用的です。
認定調査では普段の状態をありのまま伝えること、主治医に日頃から困りごとを伝えておくこと、ケアマネジャーに相談することが、適正な認定を受けるための重要なポイントです。結果に納得がいかない場合は、区分変更申請で再評価を受けることを検討してみてください。困ったときはひとりで抱え込まず、地域包括支援センターに相談してみてください。
※この記事の情報は記事執筆時点のものです。介護保険制度の詳細についてはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。


